コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻、そして度重なる北朝鮮のミサイル発射など世界情勢はここ数年で大きく変わりました。これまで当たり前であったことが、突如当たり前でなくなる事態を迎えています。このような想定外の事態にも対応できる社会を早急に築く必要があります。
 すでにその兆候が出始め、例えば、食料や工業製品の国内製造回帰をはじめ、防衛予算の増額などの変化が見られます。不測の事態に対してしっかりと備えをしておかなければなりません。
 また、デジタル化やAIなどの進展により、物質的に便利で豊かな時代を迎えていますが、国家の礎である人と人とのつながりが薄れ、お隣さんやご近所さんと面識がなかったり、家族が楽しく集うはずの食卓でも目線と気持ちはそれぞれの携帯電話に向いていたり、精神的には貧しくなったように感じています。

 これらは縁あってリスキリングさせていただいた京都大学の大学院やエグゼクティブ・リーダーシップ・プログラムで改めて感じたことですが、そこでの一番の学びは“京都学派(Kyoto elite)”の教えについてでありました。
 西洋的な視座『有』と東洋的な視座『無』という視点に根本的な違いがあり、それが起因となって精神的な貧しさが産み出されてきたのではないかということでした。
 言い換えれば、『からごころ(契約社会)』と『やまとごころ(信頼社会)』の違いでしょうか。我が国固有の思想による統治を推し進めていくべき時を迎えているように感じます。
 特にここ京都には日本の心と知恵の原点があると感じています。文化庁の京都移転を機に、その心と知恵を活かして京都の素晴らしさを国内外に向けて発信し、この文化や伝統の力で貧困や紛争を続ける世界を平和にするため引き続き尽力して参ります。